記録のため、ちょうど一年前のFacebookへの投稿をここに転載します。
以下引用
Facebook 2016年11月26日
ある著名な「イケメン記者」から質問を受けたので、久しぶりに投資のことを書いてみます。
アクティブ対パッシブの論点において日本株は特別だという主張は、今まで幾度となく提示されてきました。
この「不思議」の実証的解明は、ぜひ専門家の研究に期待したいところですが、ここでシェアする論文に関連して、私のつたない知見から二三ご紹介したいと思います。
まず、市場の効率性が低いとアクティブが勝ちやすいという説は、理論的に怪しいということ。
市場の効率性が低いと、アクティブ運用の成績の分布(ベルカーブ)はなだらかになりますが、その中心が右(ないし左)に移動するわけではありません。
そもそも、市場効率性の強弱にかかわらず、パッシブ運用成績はいつでも平均にあるわけで、アクティブ運用者の競争相手は他のアクティブ運用者です。アクティブ運用者には上手いやつと下手なやつがいるとして、下手なやつの成績は必ず市場平均に負けるわけではなく、その周辺に偏りなく分布するはずです。これはコイン投げと同じです。とすると、結局勝負は上手い運用者どうしで争われることになる。そしてその平均が市場平均になるはずです。
ちなみに、以前この考えをバンガードの専門家にぶつけたことがありますが、賛同を得ています。
さて、それでもなお情報の非対称性が成績を分けるとしたら、すなわちごく少数の特定プロ投資家にだけアクセス可能な有効情報があるのだとしたら証取法違反の疑いが濃厚です。しかも恒常的にあるのだとしたら、日本の株式市場の構造的な違法性を疑わなければなりません。私は、無いと思います。
個々のインデックスの適正性については、専門家の研究に任せます。
もう一つの論点は、サバイバーズバイアスの問題です。周知のとおり、日本の投信市場は、商品(個々の投信ファンド)のライフサイクルが極端に短いという問題を抱えています。とすれば、サバイバーズバイアスが強く働くことが当然に予想されます。これも専門家の検証を期待します。
ついでに、10年間好い成績のファンドは存在しますが、それが今後の10年間も好い成績を上げるかどうかは全く予想できません。これは、いくつもの研究が実証済みです。
好成績の由来はほとんどがマグレだと思いますが、超能力も否定することが出来ません。冗談ではありません。私は様々な超能力の存在を信じています。しかし、残念なことに、あるファンドの運用者が超能力者であるのかどうかをあらかじめ判定する客観的方法は存在しません。あったら私は今頃億万長者で、その方法は絶対誰にも教えません。
最後に、一緒に仕事したこともあるバートンマルキールの次の言葉は印象的です。「アクティブが恒常的にパッシブを上回ることが出来ないと投資家に知らせることは、6歳の子供に本当はサンタクロースはいないよと知らせることに似ている。」
以上、参考になれば望外の幸せです。