スティーブジョブズは現代のヒーローのように語られる。
しかしそれは、彼がこの時代を代表するということを必ずしも意味しない。現代という時代は、むしろ全く反対のもう一つの顔によって代表されているのだから。それは官僚制だ。
ジョブズは主観に生き、主観で仕事をした。しかし今の企業の大勢(殊に大きな株式公開企業)は、特定個人の恣意や裁量を許さないことを、ガバナンスの前提として経営されている。現代の実業界において、アップルは例外的な企業であって典型的な企業ではない。ジョブズは異端の経営者であって典型的な経営者ではない。
官僚制においては、責任の所在があいまいになる。一組織内の各機関の固有の責任は形式的に明確に定義されていても、まさにそれ故に、全体の最終責任者は明確でない。
また、官僚制にあって個人は自分を表現できない。だから、創造的には決してなれない。
だからこそジョブズがヒーローとされるのだ。
官僚制は、現代社会の抱える多くの病の数少ない根本原因のひとつだ。
現代文明が個人の開放を推進するなどという迷妄は捨てなければならない。
現代文明は今後ますます個人を阻害する。
20世紀文明を先導してきたアメリカの「自由」などを真に受けてはならない。ニューヨークの自由の女神は、ただ松明を掲げて佇むのみで、一歩も歩くことが出来ないのだ。
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