国連気候変動首脳会合が閉幕した。
ニュースをざっと読む限り、いよいよ世界の政治的関心が本格化したとの印象が強い。
これからこの問題は、国際政治劇の端役から脇役へ、そして準主役へとグレードアップしていくだろう。
特に米中が動き出したことが、今後の展開に大きな質的変化をもたらすだろう。
より真剣な取り組みが始まりそうなのは間違いなく良いことだが、一方で不安も膨らむ。
真剣な取り組みへの誘引としては、勿論最近の世界的異常気象の頻発と、気候変動をうらづける科学的研究が進んだことが大きい。
しかし、そのほかに、あるいはそれ以上に、大国の政治家を駆り立てたのは、安全保障上の重要性の認識が高まったことだろう。
気候変動をめぐる国際政治合戦が格段に先鋭化するに違いない。
アメリカは、問題解決を主導するパートナーとして中国を強力に持ち上げた。そして結局中国はそれに応じた。
実際両国が最大の二酸化炭素排出国であり、最大の経済大国なのだから当然なのだが、それだけではなかろう。
アメリカは、世界の指導国としての地位獲得を目指す中国の野心を巧みに利用しようとしているように見える。
かつてレーガンは、軍拡競争にソ連を引きずり込み、計画的にソ連の経済を破綻させて冷戦に勝利した。
それに似た戦略的意図を今回のアメリカの対中対応に読み取るのはうがちすぎではなかろう。この誘いにまじめに応じるとすれば、中国は相当な予算をこれに振り向けなければならない。
その戦略は正しいと思う。
しかし、冷戦時代との環境の違いも甚だ大きい。米中を含む世界各国の経済的相互依存は広範深甚複雑に絡み合う。
かつての米ソのような単純明快な勝敗は起こり難い。さまざまな局面ごとの痛みわけ、引き分け、不戦勝、棄権、つまり、米中の政治的取引での決着となろう。これは望むことの出来る良いほうのシナリオだ。
下手をすれば、あからさまな衝突もあるだろう。
うまくすれば、中国の一党独裁体制崩壊を早めるかもしれない。相当な混乱を覚悟しても、それがいわゆる自由主義陣営にとっての最良のシナリオであり、中国国民にとってもしかり。
いずれにせよ、日本の外交は戦後のぬるま湯的環境から既に引きずり出されている。
日本にとってもっとも悪いシナリオは、米中の「大同団結」の結果、その影で極東情勢が二国の間でさまざま取引されることだろう。
おそらく、嫌でも取引は避けられまい。日本の出来ることは、その取引の場にどれだけ食い込めるか、どれだけ影響を与えられるかだろう。
改めて言うまでもなく、日本は、多角的でしたたかな外交手腕が試される厳しい時代の中心に放りこまれてしまっている。
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