このBlogに投稿するよりもFacebookに投稿する方が技術的にはるかに簡単だ。
それでつい、先ずはFacebookに投稿するのが習慣になってしまった。
いったんFacebookに書いてしまうと、Blogに投稿することはさらに億劫になる。
さて、先日の二回目の米朝首脳会談の結果について。
大手メディアの最初の反応は、例によって「トランプの大失敗」を強調した。
しかし、日を追うごとに少しづつ論調が変遷して、今では合意失敗によって苦境に陥ったのはキムジョンウンの方だとする見方が大勢だ。その場合でもなお「トランプは北朝鮮の要求に妥協したかったのをポンペイオやボルトンが押しとどめた」などと飽くまでトランプの主体性を否定する論者が多いのには呆れる。
私は、トランプ大統領が合意を拒否して交渉の席を立ったのを知って、それはトランプ個人の衝動的な行動でもボルトンらの強い進言に嫌々応じたのでもなく、トランプを含むチーム全体の計画的なものだった可能性が高いと考えた。
それは前回の首脳会談後の共同声明の内容を冷静に分析すれば自然に解ることだ。
共同声明で明らかになったのは、要するに、北朝鮮はアメリカからの非核化の要求に応じない限り制裁を受け続けなければならないということだった。
今回の「決裂」は、そのことをキムジョンウンに思い知らせるために最も効果的なやり方だったと思う。だとすれば、前回と今回を合わせて、実に巧妙な交渉過程の組み立てだ。
ここに第一回米朝首脳会談の直後に私が書いた二つのFacebook記事を転載する。
20180617付Facebook
トランプは名を捨てて実を取った
今回の米朝共同声明について、メディアでの大方の評価は、「トランプは実を捨てて名を取った」だ。
私は反対だ。
トランプがノーベル平和賞を欲しがっているのは確かだろう。オバマもそうだった。
しかし、そんなことは世界平和の実現と何の関係もない。
メディアの論拠は、「CVIDの約束無しに体制保証を約束したから」だ。
北朝鮮現政権の体制保証などしていないことは前回の投稿で検証した。
一方、CVID(完全かつ検証可能かつ不可逆的な非核化)の文字がそのまま盛り込まれなかったことはその通りだ。
そのかわり、次の文言が明記された。
「Chairman Kim Jong Un reaffirmed his firm and unwavering commitment to complete denuclearization of the Korean Peninsula.」
すなわち、金正恩は「朝鮮半島の完全な非核化への確固とした揺るぎないコミットメント」を約束させられた。
この文言上(名)の違いが、実際上(実)どのような違いを生むのかが問題の核心だ。
そもそもこの首脳会談と共同声明にはどんな意味が込められていたのか。
過去何度も北朝鮮は約束を破った。もう約束だけでは信用できない。行動を確認するまで制裁/圧力をやめない。というのが出発点だった。
そこへ、今年一月以降金正恩が(その実態は曖昧ながらも)非核化をちらつかせ南北融和を喧伝して対話を強く迫った。
トランプは北朝鮮の言う「非核化」を手前勝手に解釈して対話応諾の電撃決断をした。
ちなみに、この手前勝手解釈について、メディアの大勢はトランプの無知によるものだと断じたが、一部の識者は北朝鮮の発言を巧妙に逆手に取った可能性を指摘した。
北朝鮮がアメリカの軍事攻撃を恐れ経済制裁に悩まされていたことはほぼ異論のないところだ。
共同声明でアメリカが得たものは、北朝鮮の非核化の約束だ。取り漏れたのは、「検証可能」の文言だ。制裁/圧力の緩和は触れられていない。
北朝鮮が得たものは、「検証可能」の文言を書かせなかったことだけだ。
更に、大メディアがことごとく無視していて私が注目しているのは、箇条四項のうちの第一項「The United States and the DPRK commit to establish new U.S.–DPRK relations in accordance with the desire of the peoples of the two countries for peace and prosperity.」だ。
この「in accordance with」以下の限定修飾句は、さりげなく添えられているが、金正恩の今後の行動を強く牽制することになるだろう。
すなわち、今後の両国の関係は、米国民のみならず北朝鮮国民の平和と繁栄への希求に沿ったものでなければならないと明記されたのだ。
というわけで、共同声明後アメリカは、経済制裁を続けつつ
1.北朝鮮が核ミサイル開発の再開のみならず非核化のサボタージュをしているとのなんらかの兆候があればいつでも軍事圧力の強化ないし軍事攻撃を実行できる。
2.アメリカの好きなときに、金政権が北朝鮮国民の平和と繁栄の希求に反した行動を取っていると主張して軍事圧力の強化ないし軍事攻撃を実行できる。
ということは、金正恩は今後完全査察を含む非核化に向けての具体的行動を取らざるを得ないだろう。
さもなければ、経済制裁を受け続けつつ、アメリカの軍事攻撃(斬首作戦、クーデター誘導を含む)の悪夢に怯え続けなければならない。
というわけで、私は、トランプが実を取り金正恩が名を取ったのだと考える。
20180613付Facebook
「体制保証」は誤訳かフェイクか
私も昨日の米朝首脳会談には拍子抜けした。
非核化の行程と担保について、もう少し具体的なことが発表されることを期待していたからだ。
しかし、共同声明をよく読んでみるとメディアの大方の論評ほどに悲観したものでもないことに気づく。
ここでは取りあえず、批判的論調の最大の根拠となっていると思われる「北朝鮮の体制保証」に絞って検証してみたい。
トランプは本当に金正恩体制の継続を保証してしまったのだろうか。
私が日経新聞を読み複数の地上波テレビニュースショーを見た限り、一部の識者の地味な論評を例外として、概ね、「してしまった」かのように報道されている。
この認識を前提に「他国の政権、それも独裁政権の存続を保証するなどというとんでもないことを言ってしまうトランプ」を声高に非難するコメンテーターまで存在する。
例えば、日経の13日朝刊の一面には、「体制保証を約束 共同声明」との見出しが踊り、その脇に「共同声明のポイント」として四項目のうちの二項目に「米は北朝鮮の体制保証、北朝鮮は完全非核化を約束」と大書きされている。
これは、正確な報道であろうか。本当に米国は北朝鮮の現体制の保証をしたのだろうか。
さあ、共同声明の原文を読んでみよう。(ホワイトハウスのサイトからダウンロードした原文全文を末尾に引用するので参照願いたい。)
まず原文には「体制保証」にあたる語句は存在しない!
和訳「体制」の原語と思われる英語は2ヶ所、和訳「保証」の原語と思われる英語は1ヶ所に発見できるが、この二つの英単語は、互いに異なる文脈のなかに使われている。
具体的に見てみよう。
まず「体制」にあたる原語「regime」が現れる原文は次の2文のみ。
「President Trump and Chairman Kim Jong Un conducted a comprehensive, in-depth, and sincere exchange of opinions on the issues related to the establishment of new U.S.–DPRK relations and the building of a lasting and robust peace regime on the Korean Peninsula.」
「2.The United States and the DPRK will join their efforts to build a lasting and stable peace regime on the Korean Peninsula.」
二つ目は一つ目の繰り返しであることは明らかである。
「to build a lasting and stable peace regime on the Korean Peninsula.」
難しい英語ではない。正確に訳せば、「朝鮮半島に永続的で安定的な平和的政治体制を築く」となる。
どう捻っても「北朝鮮現体制の保証」と訳すのには無理がある。それどころか、現体制とは異なる新しい平和的政治体制を新たに構築すると読むほうが余程自然だろう。
次に「保証」にあたる原語「guarantee」が現れるのは次の1文のみ。
「President Trump committed to provide security guarantees to the DPRK, and Chairman Kim Jong Un reaffirmed his firm and unwavering commitment to complete denuclearization of the Korean Peninsula.
」
つまり「北朝鮮の安全を保証する」と言っているに過ぎない。
同文の後半と合わせて読めば、北朝鮮が完全な非核化を約束する見返りに、アメリカは北朝鮮を軍事的に侵攻することはないという意味と解される。
さて、大メディアの誤報は、単なる読解力不足かそれともトランプ憎しの印象操作か。
https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/joint-statement-president-donald-j-trump-united-states-america-chairman-kim-jong-un-democratic-peoples-republic-korea-singapore-summit/?utm_source=link&utm_medium=header
President Donald J. Trump of the United States of America and Chairman Kim Jong Un of the State Affairs Commission of the Democratic People’s Republic of Korea (DPRK) held a first, historic summit in Singapore on June 12, 2018.
President Trump and Chairman Kim Jong Un conducted a comprehensive, in-depth, and sincere exchange of opinions on the issues related to the establishment of new U.S.–DPRK relations and the building of a lasting and robust peace regime on the Korean Peninsula. President Trump committed to provide security guarantees to the DPRK, and Chairman Kim Jong Un reaffirmed his firm and unwavering commitment to complete denuclearization of the Korean Peninsula.
Convinced that the establishment of new U.S.–DPRK relations will contribute to the peace and prosperity of the Korean Peninsula and of the world, and recognizing that mutual confidence building can promote the denuclearization of the Korean Peninsula, President Trump and Chairman Kim Jong Un state the following:
1.The United States and the DPRK commit to establish new U.S.–DPRK relations in accordance with the desire of the peoples of the two countries for peace and prosperity.
2.The United States and the DPRK will join their efforts to build a lasting and stable peace regime on the Korean Peninsula.
3.Reaffirming the April 27, 2018 Panmunjom Declaration, the DPRK commits to work toward complete denuclearization of the Korean Peninsula.
4.The United States and the DPRK commit to recovering POW/MIA remains, including the immediate repatriation of those already identified.
Having acknowledged that the U.S.–DPRK summit—the first in history—was an epochal event of great significance in overcoming decades of tensions and hostilities between the two countries and for the opening up of a new future, President Trump and Chairman Kim Jong Un commit to implement the stipulations in this joint statement fully and expeditiously. The United States and the DPRK commit to hold follow-on negotiations, led by the U.S. Secretary of State, Mike Pompeo, and a relevant high-level DPRK official, at the earliest possible date, to implement the outcomes of the U.S.–DPRK summit.
President Donald J. Trump of the United States of America and Chairman Kim Jong Un of the State Affairs Commission of the Democratic People’s Republic of Korea have committed to cooperate for the development of new U.S.–DPRK relations and for the promotion of peace, prosperity, and security of the Korean Peninsula and of the world.
DONALD J. TRUMP
President of the United States of America
KIM JONG UN
Chairman of the State Affairs Commission of the Democratic People’s Republic of Korea
June 12, 2018
Sentosa Island
Singapore
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