硬派の文章が読みたくて勇んで買った幸田文の「父」は読み足が遅い。
繊細で緻密な感情描写が魅力だが、読み込むうちに女性特有の愚痴と弁明の言い募りだと気付く。
巧みで隙のない文章だけに、漸く鬱陶しくなる。
一葉を愛し書くことも好きだった我が母は生前、書けば結局愚痴になるから書き残したくないと言ったことがある。
「父」を読むとその言葉がその面影とともに蘇って私の胸を突く。
母は晩年老人ホームで認知症とパーキンソン氏病を病む父と過ごしたが、遺した俳句はどれも身の回りの四季の気配と夫への愛情を詠んだものだった。
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