2016年11月13日日曜日

トランプはどこだ? 二つの箱の中を探せ

あたかもトランプ現象またはトランプショックが分断をもたらしたかのように喧伝されている。

話は逆で、抜き差しならぬ分断が大きくなりすぎたからトランプが出現したのだ。

ヒラリーとトランプ、オバマとトランプが表向きまたは政治的に和解劇を演出しているにも関わらず、一部アメリカ国民が暴動まがいの反トランプデモを行い、それを例によってメディアが煽っている。

ここで良識あるアメリカ国民と日本人を含む世界の人たちに必要なのは、戦うべき相手が誰なのかを冷静に見極めることだろう。

先ず確かめなくてはならない。トランプはどこだ?

トランプは四つの箱のうち二つのどちらかにいる。

ビジネスパーソン向けのセミナーなどで多用される手法を使おう。やや乱暴だが実用的なツールである。

四つの象限による分類だ。

横軸の左側にグローハリズム志向、右側にナショナリズム志向を置く。

縦軸の上側に平和志向、下側に紛争志向を置く。

出来上がった四つの箱を左上から反時計回りに「グ平」箱、「グ争」箱、「ナ争」箱、「ナ平」箱と呼ぼう。

反トランプ派は、トランプがナ争箱にいると言って攻撃していると見ることが出来る。

トランプとその支持者が人種差別、宗教差別、女性蔑視を通してアメリカを引き裂き、それが排外主義となって世界に波及し、世界中に紛争と戦争をまき散らすと考えているようだ。

ここで最も重要なことは、善良な反トランプ派が自分の仲間はすべてグ平箱に住んでいると思い込んでいることだ。

さらに、彼らはナショナリストがすべて好戦的で排他的だと信じこんでいる。つまり、彼らはナ平箱とその住人の存在を認めていないのだ。

すなわち、善良な反トランプ派の人々には、ここで仮定している四象限が見えていない。対立軸が一本しかなくて、グローバリスト=平和主義者 対 ナショナリスト=好戦的排他主義者 の構図になっているのだ。

一般に、人がある対象に強い嫌悪感ないし怒りを感じるとき、特にその感情が反射的に湧きあがるときには、一息置いて冷静にその嫌悪感の源泉を省みた方がいい。

知らず知らずのうちに不合理な偏見に支配されているかも知れないからだ。洗脳されているかもしれない!

さあ、果たしてグローバリストは全て平和主義者なのだろうか。また、ナショナリストはすべて好戦的な差別主義者なのだろうか。

ここから議論を始めないと、真の敵を見誤る。味方を攻撃してしまう。オウンゴールをやらかしてしまう。

最初の論点に戻ろう。人種差別、宗教差別、女性蔑視によって分断された今のアメリカを作ったのは、トランプ支持者やナショナリストたちだっただろうか。

人種差別、宗教差別、ジェンダー差別は、グローバリストの間には存在しないのだろうか。

人種差別、宗教差別、ジェンダー差別は、建国以来アメリカに存在した。その是正が長い紆余曲折の歴史を通じて行われてきたというのが真実だろう。

では今更それが爆発しなければならない原因はどこにあるのだろう。トランプ的人間が出てきたからだというのは説明になっていない。

ジェンダー差別は別件逮捕だからさておくとして、人種差別、宗教差別の圧力の高まりは、一つには国内産業の衰退による白人貧困層と不法移民を含む移民の間の労働機会の奪い合いが原因だろう。もう一つの原因は、中東地域の様々な紛争とそれらに関連するテロの頻発を淵源とするイスラム教徒の移民の増加と彼らに対する偏見の高まりだろう。

この二つの原因を作り出したのは、トランプ的アメリカ、すなわちナショナリストの仕業ではない。

これらの原因を作り出したのは、国内産業を空洞化させたマルチナショナルビッグビジネスであり、石油その他天然資源をコントロールするために関係諸国の政治と紛争に介入し続けるグローバリストたちである。

しかも彼らはその罪の隠ぺいのために、口では世界は一つ、人類はみな平等、人権第一を歌い上げている。

このシステムの中心にいる勢力は、例の四象限で言えば、グ争箱に巣くっている連中だ。彼らこそ本物のグローバリストであり、善良で純真なグ平箱の人々を騙してナショナリストたちへの攻撃にむかわせているのだ。

このグローバリストたちから多額の資金を得て政治を動かしている政治家の代表格は、ヒラリークリントンだ。

このからくりに気が付けば、グ平派の人々は、グローバリズムの罪深さを悟ってナ平箱へと移転して来るはずではないか。

それでもなおナショナリズムという言葉の響きに強い抵抗を持つ人々に問いたい。

自国の文化、伝統、国土を愛しその利益を優先する国民は、悪人なのだろうか。それらの国民同士は、争いをする以外にないのだろうか。

異なる文化、異なる思想、異なる歴史、異なる利害を持つもの同士が、互いに相手を認めあい、尊重し、共存の道を求めて妥協点を探ることこそが、私たちの目指す国際社会なのではないのか。

ならばなぜ、ナショナリズムを憎まなければならないのか。世界を一つにしてあらゆる国境をなくさなければ仲良くなれないというのは、論理の飛躍であり、非現実的な考えだ。

それどころか、この考えこそが問題を深刻化させてきたことを銘記しなければならない。

今こそグローバリズムの内包する矛盾と欺瞞に気付く時だ。

グロバリズムの頂点にいる連中は、いくつもの国に会社を持ち、いくつもの国に預金口座を持ち、いくつもの国に投資し、豪華ヨットや自家用ジェットで世界中を駆け回り、主に英語を話し、世界中の同類たちと高価な酒を酌み交わしながら情報交換をしている連中である。

そして彼らは、いくつもの国に高い壁で囲った屋敷を持ち暮らしている。決して善良無垢な各国国民と生活空間をともにするような輩ではない。、

あなたたちがどんなに崇敬し、憧れ、慕おうと、決してあなたたちを大事にしてくれるような人たちではない。

最後に、あなたたちはどの箱にいるのか。

2016年11月9日水曜日

トランプという希望

トランプが勝った。

すなわちMSM(メインストリームメディア)が負けた。

あれだけ反トランプキャンペーンに躍起になったにもかかわらずやられたのだから、さぞショックだろう。

そしてこの敗北はあのBrexitに続いての敗北だ。

世界全体が音を立てて変化している。

トランプ現象とBrexitいずれも、実は一つの大戦争の二つの戦闘だ。

戦争の対立軸は、グローバリズム対ナショナリズムであり、多国籍資本対国民経済であり、支配層対非支配層であり、富裕層対貧困層であり、特権階級対大衆であり、進歩主義対保守主義である。

前者勢力の代表がウォール街であり軍産複合体であり石油資本である。そして注意すべきは、MSMはそちら側の重要なプレーヤーだということだ。

つまり、MSMはグローバリストの宣伝機関または洗脳機関なのだ。

と言っても、議論が飛躍しすぎて腑に落ちないだろう。

次のように言えば分かりやすいかもしれない。

世界の政治と経済を牛耳っている勢力は、国境を超えて経済活動を展開し、各国の主権と法制度を敵視している連中である。決してアメリカ政府そのものではない。

世界中に紛争を起こし、地域を間接支配し、石油を確保し、金融をコントロールし、もうけた金をタックスヘイブンに蓄える。

カネとモノとヒトを国境を越えて自由に行き来させることが彼らの利益を生む。

必然的に各国の文化的特異性も邪魔になる。

二十世紀の後半から世界中の人が、とりわけ日本人が、彼らのプロパガンダに犯され続けてきた。

アメリカ国民も、日本人とは違った経緯で、強力に洗脳されてきた。

その魔法がいま溶けようとしている。

政治的建前から本音重視への移行である。

オバマ時代は、ポリティカルコレクトネスの頂点だった。建前で現実を処理することはできないから、当然オバマ政治は失敗した。

オバマに「チェンジ」の夢を見たアメリカ国民は、彼のキレイゴトに無残に裏切られて、今度は、彼らの本音を拡声器で叫んでくれる、下品だが頼りになりそうなトランプ親分に賭けてみる気になったのだ。

「地球市民」などは、「非武装中立平和主義」と同様、マヤカシであり、幻想であり、偽善的言説であり、それどころか危険思想でさえあるのだ。国境はすなわち国家主権であり、国家は私たちの生存と安全に不可欠なのだ。

国境の壁は、目に見えるものであろうがなかろうが、必要なのだ。

私も、トランプにささやかな希望を託す一人である。

むっつりス〇〇より陽気なス〇〇の方がましだとか、インテリづらの犯罪者より下品な正直者の方がましだとかという次元の話ではない。

本来の政治の機能を少しでも取り戻して、世界的な支配と被支配の関係を打ち壊す端緒を作ってくれないかという期待だ。

それは、地球規模の欺瞞を闇から引きずり出して、政治を本音に近づけることから始まるのではないかと考えるからだ。

日本国の在り方も、やっとそこから議論が始められるからだ。漸く日本の国体と防衛について、本当のことを話し合える時代が来たのかもしれない。

ただ、恐ろしいのは、グローバル支配勢力からの反撃だ。彼らには膨大なカネとネットワークがある。

とてつもなく周到で狡猾な謀略が張られるだろう。

最も分かりやすく効果的なのは、トランプの暗殺か。極東の独裁者の暗殺よりもずっとありそうな話だ。

げに恐ろしきはグローバリストである。