2013年5月13日月曜日

黒澤+三船にゃ誰もかないっこねえ

一昨日テレビで森田芳光監督の「椿三十郎」を見た。二度目だ。言うまでもなく、50年前の黒沢作品のリメイクだ。

織田裕二が三船敏郎の向こうを張ろうってえのが所詮無茶な話だ。リメイク作品が発表された当時、よくも織田が引き受けたものだとあきれたが、もう一度見て改めてその勇気に感心した。

最後まで見るには見たが、見るほどにいよいよオリジナルが恋しくなって、直ぐにアマゾンでDVDを注文してしまった。

今晩帰宅するともう届いていて、明日の出張準備も済まないのに、待てずに見てしまった。改めてオリジナルを見ると、織田のみならず、森田の無謀こそ思わずにいられなかった。

同じ脚本を使っているので、当然台詞はほぼすべて同じだが、だからこそ、演出の差は歴然として現れる。

今どきの俳優たちの演技力と生活感の希薄さについては、この際言わないことにしよう。台詞回しの間といい、役者の表情、立ち居振る舞いといい、カメラアングルといい、黒澤のセンスはやはり秀逸だということが、こうやって比べてしまうといやおうなく見せ付けられる。カメラアングルなど、なるほどこう撮るかと、うならされる場面がいくつもあった。ともかくすごい。

森田もなかなか好きな監督だ。織田も好きだ。しかし・・・。

三船演ずる浪人の格好良さは、天下一品。ショーンコネリーのジェームスボンド以上だ。我輩には、ショーンコネリーの四十代以降の演技が、三船を意識していたようにしか見えない。

そう言えば、「風とライオン」でショーンコネリーが馬で逃げる敵に追い迫って、走る馬上から敵を一刀両断するシーンを見て鳥肌が立ったが、何年も後になって、それが「隠し砦の三悪人」で三船が見せるシーンの公然のパクリだということを知った。しかも、三船はそれを吹き替えなしで演じ切っていた。

まだまだ語りたいことがあふれ出してくるが、切りがないので、あと一つだけにしてやめておく。

オリジナル椿の最後の名物シーン。三船が仲代を一瞬の居合いで倒すが、何度リピートしてみても、三船がどうやって刀を抜いたのかわからない。おそらく鞘に仕掛けがあったのだろうと推理するが、それにしても三船のあの身のこなしを真似できる俳優は、後にも先にもいるはずがない。

黒澤と三船のコンビには、誰もかないっこない。ハリウッドの監督たちがあれほどまで黒澤に憬れたこと、うべなるかな。