2017年4月8日土曜日

シリア政府軍の化学兵器使用 その動機は?

シリア政府軍が空爆で化学兵器を使ったそうだ。
米と西欧の主要国とその主要メディアとNGOがそう主張している。
シリアは否定している。ロシアは十分な証拠がないと主張している。

このタイミングでシリア政府が化学兵器を使用すると彼らにどんなメリットがあるのだろうか。

まず事実を見よう。
この事件の前、戦況はロシアの支援を得た政府軍側に有利で、政府軍の勝利が目前と伝えられていた。
トランプはシリア政府との融和を目指すと公言していた。ロシアとの協力も目指すとしていた。
この事件のあと、トランプはアサドに対する考えを一変させ政府軍への軍事攻撃に踏み切った。ロシアとの対決姿勢を強めた。
この政府軍の化学兵器を伴う空爆による死者は70人ほどだった。
この事件は、北朝鮮の核兵器開発に対してトランプ政権が軍事的対応を示唆した直後、トランプ習近平会談直前に起きた。

さて、アサド政府は「化学兵器を使う」ことで何を得ようとしたのか。また、実際にどんなメリットを得たのか。
まったく見当たらない。
逆に損ばかりだ。

70人余りの人を殺すために国際法で禁止されている大量破壊兵器たる化学兵器使用を強行する必要があったとは到底考えられない。

もし本当にシリア政府の仕業だとしたら、アサドは余程の馬鹿者だ。

では、誰が得したのか。
アサド政府の優勢を覆したい者。
トランプとアサドの仲を裂きたい者。
トランプとロシアの対立を煽りたい者。
シリア紛争を含む中東紛争にアメリカを引き留めたい者。

アメリカはオバマ大統領のときから、世界の警察官として世界中で軍事行動を展開することはもはやできないと公言するようになった。具体的には二地域以上で大規模な軍事展開は出来ないと言い出した。
同時にアジアシフト戦略を言い出した。
つまり、中東への介入の縮小を目指していた。

オバマはそれを公言して実行しようともがいていた。トランプはその戦略を基本的には継承してアメリカファーストを唱え、より鮮やかに(オバマのような優柔不断を晒さずに)それを実現しようと考えた。その戦略の中心がロシアとの融和だ。

大方のメディアは、今回のアメリカの対シリア政府ミサイル攻撃は、トランプの軍事的強硬姿勢を示したことで、中国、北朝鮮に対する強い牽制を果たしたなどと論評している。

これは極めて疑わしい。

アメリカをシリア紛争、中東紛争の泥沼に引きずり込むことは、アジアの覇権を狙う中国の戦略に有利に働く。朝鮮半島の「解決」における中国の主導権を強化する。アメリカはシリア方面に軍事的資源を振り向ける必要から北朝鮮への対応を控えざるを得ないかも知れない。つまり、朝鮮半島統一における中国のより強い関与を認めざるを得ないかも知れない。同時に、アメリカとロシアの接近による中国封じ込めが不可能になる。

シリア政府以外の某国または某勢力の工作員が、空爆被害のどさくさに紛れて一定量のサリンをまいて少数の化学兵器被害者を出すことなど、実行上難しいことではなかろう。

動機の面から考えると、下手人はアサドではない。中国か北朝鮮か軍産複合体かアメリカ内外の反トランプ勢力(グローバリズム勢力)かそれら複数の合作か。

この事件は、朝鮮情勢、東シナ海、南シナ海情勢への影響を考えれば、日本にとっては有利どころか不利に働くことだろう。


0 件のコメント: